君に、ひと時の安らぎを。
君と、ひと時の安らぎを。
ときのすごしかた。
どうするべきか。
柄にもなく、総士は迷っていた。
「う〜ん・・・」
実際は迷うことでもなんでもなくて、どうすればいいかなんてわかっている。
でも、自分の気持ちとは・・・ちょいとばかり違うもの。
自分の思うようにしたいのは確か。
だからといって、自分の我儘で相手を不機嫌にさせるのはちょっと癪。
こういうことが我儘だということを彼は気付いているのかいないのか。
「・・・よしっ」
散々・・・とまではいかなくてもかなり長い間悩んだ挙句、総士は行動をとるべく身構えた。
そっと手を伸ばして・・・
「ん・・・、ふぁあ・・・あれ、総士?何やってんだ?」
「〜〜〜〜っ!」
「?」
作戦は、失敗。
結果はオーライ。
「何でもないっ!」
ただちょっと、悔しいだけ。
仮眠室。
そこに、その名の通り仮眠を取るべく入って。
ふと、人の気配。
なんだろうと見てみれば、一騎がいたわけだ。
しかも気持ちよさそうに寝ている。
戦闘の連続。
その、つかの間の休息。
激しく体力を消耗するうえただでさえエネルギーを必要とする年齢なのだ、睡魔が襲ってくるのは当然のこと。
実を言えば総士も同じような状況だった。
だから静かに隣で寝ようと傍まで来て、その寝顔を見たら。
懐かしさに襲われた。
一体何年前になるのか。
彼の、こんな無防備な姿を見たのは。
そっと、顔を覗き込んでも起きる気配はなく。
しばらくじっと眺めていたのだが。
「・・・つまらない。」
寝ている姿はこれ以上にないくらい、自分をほっとさせるものだけれど。
反応がないのは・・・少し。
それが自分たちの古傷を、深く抉るものだったとしても。
「う〜ん・・・」
疲れている体は休ませるのが一番。
でもそれじゃあつまらない。
起こすべきか、寝かして置くべきか。
「・・・よしっ」
たまには・・・我儘も、いいよね?
起こし方は、もう決まってるから。
そこで、そっと手を伸ばす。
彼の、鼻を摘んでやろうとしたところで。
「ん・・・、ふぁあ・・・あれ、総士?何やってんだ?」
彼が、目を覚ましてしまったというわけだ。
うーん、と伸びをして、首を動かす。
調子は良さそうだ。
でも、あれは・・・さすがに。
「びっくりしたんだけど。」
「そうか?」
しれっと総士は答える。
さっき、あんなに悔しがってた・・・?とは思えないくらいに。
でも身に纏う空気がどこか、暖かい。
少し不機嫌そうなところが笑いを誘う。
懐かしい、空気。
あの空気を失ってしまったのは、拒絶したのは他でもない自分だけれど。
こんなにも、懐かしい。
たまには・・・忘れても、いいよね?
だって、君のその様子を見たら。
くすくすと小さく笑えば、不満を隠しもしない彼の顔。
「・・・何?」
「いや・・・変わんないなぁと思って。」
変わったところ。
変わらないところ。
幼馴染だからこそ、わかること。
「寝起きだから水分ほしいな・・・。総士もなんかいるか?」
「・・・お茶。」
「りょーかい。」
たまには・・・戻っても、いいよね?
なんのためらいもなかった、小さいころに。
「お茶・・・持ってきたよ。」
返事が、ない。
「・・・総士?」
さっき自分が寝ていたところまで戻る。
紙コップから飲み物が零れない様、慎重に。
「・・・あ。」
自分が寝ていた椅子に広がる亜麻色。
それは、気持ち良さそうに寝ていた。
「う〜ん・・・」
起こすべきか、起こさないべきか。
起こしちゃかわいそうだとは思うんだけど。
「なんだかなぁ・・・」
せっかくお茶、持ってきたのに。
そのままにしておくのはなんか癪。
自分の我儘だとはわかっているんだけど。
「・・・よしっ」
いいよね?
だって、さっきそれで驚いたんだから。
そっと・・・手を伸ばす。
君に、ひと時の安らぎを。
君と、ひと時の安らぎを。
アタマとココロ。
選ぶのは、自分。
えらんだのは・・・
2004.08.11
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