「ただいま。」
「こんにちは、お邪魔します。」

ヤマトさん家の日常


家に二人の少年の声が響く。
彼らはそのままリビングに顔を見せることなく二階に上がっていってしまった。
バタバタという足音だけが聞こえてくる。
その音を聞いて、仕方なしに階段の下から声をかけることにする。
居間から動くのも億劫だったがそんなことも言ってられないだろう。

「一騎、帰ってきたら顔くらい見せなさい。」
「アスランさん、お邪魔してます。」
「総士君、いらっしゃい。」

階段の手すりから身を乗り出すようにして亜麻色の髪の少年が挨拶をする。
その隣に、少し不機嫌そうな黒髪の少年。

「アスラン、そんな俺こどもじゃないよ。」
「お前のこと放っておくと顔を合わせることがなくなるだろう。一日に一回くらいは顔を見せなさい。」

そんなやり取りはもう日課になっている。
なんだかんだ言ってもきちんと応対を返すだけマシなのかもしれない。
もちろんそれで満足と言うわけでもないが。
まぁ、彼ももう15だ。
いい加減うるさいと思っていることだろうが。

「もう、いいだろ?総士も来てるんだし、さ。」
「はいはい。あ、何か飲み物もって行くけど何がいい?」
「麦茶でいいよ。」
「総士君は?」
「同じでいいです。」
「じゃあ、後で持っていくよ。」
「お願いします。」

軽く会釈をすると、二人は部屋の中に入っていった。
ほ、と一息つくと居間に戻る。
居間から続くダイニング、そのテーブルには細かいコードとチップで埋められている。
アスランの仕事道具だ。
自分の書斎兼作業室もあるにはあるのだが、そこにも別の仕事の道具が所狭しと並んでいて使える状態ではない。
急ぎの仕事ということもあって、しかたなくダイニングを使っているのだ。
嫌いではないのだが神経を使う仕事のこと、集中力が落ちてくると話にならない。
というわけで、一息入れていたところに彼らが帰ってきたというわけだ。

一騎は、アスランの子供だ。
正確にはアスランと、もう一人の、だが。
戦争が終わって、落ち着いて。
しばらく一人でいたのだが、突然「ねぇ、一緒に暮らさない?」なんて台詞とともに、友達と呼ぶにはいささか問題のある彼が玄関に立っていて。
返事をする間もなく住み込まれた。
後から知ったことだが、彼は家財道具も何もかもその直前に売り払っていたらしい。
その身一つ、いや、金を持っていたのだからそうは言わないのかもしれないが、ともかくそんな状態でうちに来たのだ。
俺が断っていたらどうするんだ、そういうと「え、だってアスランが断るなんてこれっぽっちも考えてなかったから」なんてしれっと言うのだ。
まあ確かにそれはそうだが。
いろんな意味で俺のことを知り尽くしている彼のこと、いつの間にかそれで落ち着いてしまって。
気付けば俺の旦那気取りで、「子供欲しいな」なんて言ってきた。
最初はとんでもない、と反対したが、何故かその後友人知人から子供を作らないのか、と引っ切り無しに有線・無線関係なく声がかかってきた。
子供が欲しくなかったわけでもなかった俺は、結局乗せられる形で、気付けば手元に赤ん坊がいたというわけだ。
科学が進歩した今、男女の区別なく子供を作れることが出来るようになっている。
その中の一人が一騎、というわけだ。

麦茶を入れていると、背後から人の気配。
その腕が伸びてくる前に、くるりと振り返る。
大きく一歩横にずれることも忘れずに。
そうすれば、予想通りの不満げな顔。

「よけなくったっていじゃん。」
「そんなこと誰が素直にするか。」
「アスラン最近冷たい。」
「そういう風にせざるを得なくなるようにしたお前が悪い。自業自得だ。」
「え〜?」
「30過ぎにもなってそんな変な声を出すな!」
「・・・もう僕ってそんなおじさん?」
「自分の年くらいちゃんと数えておくんだな・・・」

大きくため息をつくと、お盆に麦茶とちょっとした菓子を載せて運ぶ。
その後ろを彼がついてくる。

「あれ、誰か来てるの?」
「総士君だよ。」
「ああ、あの髪の長い。」
「そう。」
「ふうん。」
「どうでもいいけど、キラも部屋の中に入るつもりか?」
「まさか。」

階段の下で持ってるよ、とキラは立ち止まった。
階段を三つほど上ってからちらりと後ろを見ると階段の下にキラがいる。
どうやら本気で待っているらしい。
この先俺大丈夫かな、と内心でまたため息をつくと子供部屋の扉を開けた。

「入るよ〜?」
「あ、ありがと。」
「すみません。」

全く同じタイミングで顔を上げる。
幼馴染はどうやら似るらしい。
小さいころ俺たちもそうだったんだろうか、と苦笑しながら机の上に盆を置く。
そのタイミングに、見てはいけないものを見てしまったと思った。
ああ、蛙の子は蛙か。
そっと腰に手を回している息子の姿に軽いめまいを感じながら部屋を出る。
総士君・・・無事で。
一騎のことだから、そんな無茶はしないと思うけど。
階段の下で待つ男を見るとなんとなく保障できないな・・・。
閉じた扉をじっと見つめて、ここでもやっぱりため息をつくと、階段を下りていった。

「一騎、どうだった?」
「どうも何も・・・」

子供のことばかり考えていてガードを忘れた体は、キラの腕の中に納まっている。
そこからどうにか抜け出そうとあがきながら、それでも声だけは冷静に返す。

「一騎、アスランに似て可愛いからなぁ。あの子に何かされてなかった?」
「まさか。」

とんでもない。
全く持ってその逆だ。

「お前の息子だと再認識したよ・・・。」
「ホントに?」

さらに力を込めて抱きしめられる。
どうやら抜け出すのは諦めたほうが良さそうだ。
正面にある男の顔は満面の笑みで「そうかぁ」と呟いてる。

「これは、いろいろと教える必要が」
「ないっ!お前は口を出すなっ!」

そんなことをしたらどうなるかわかったもんじゃない。
頼むからやめてくれ。
これ以上俺みたいな子を増やすことだけはやめてくれ。

「・・・つまんないの。まぁ、いいけどね。ああいうのは自分で探すのもオツだし。」
「・・・」
「じゃあ、僕たちは僕たちで楽しもっか。」
「え、ちょ、ちょっと、キラっ?子供たちがいるのにっ!あ、おい、待て」

そのままひょいっと横抱きにして、寝室のほうに運ばれる。
この時間帯だぞ?子供もいるのに?
だが、スイッチの入った彼には関係ないらしい。
そのまま結局彼にいいようにされてしまった。
彼にはなんだかんだいっても、逆らえない。
俺もキラのことを大切だと思っているから。


場所は変わって。

「一騎。」
「ん?」
「ちょっとくすぐったい。」
「そうか?」
「ああ・・・」
「ゴメン、なんかキラが『こうしたらどう』だなんていうから。」
「キラさんが? 」
「そう。何なんだか・・・。」
「ふぅん・・・」
「嫌だった?ホントゴメン。」
「別に嫌ってわけじゃない・・・けど・・・」
「そ、うか。」
「じゃ、次やろうか。」
「そうだな。」

微妙な空気の変化。
それが、関係を変えるものだと・・・二人が気付くことはなかった。


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