失った後に



赤。
それはザフトのトップとしての証。
ザフトに所属しているものにとって、それは誇りであり、また、羨望の的。

そして・・・俺にとっては自分の過去。

輝かしさと・・・悲しみ、苦しみ。
それでも、大切な時間だったと・・・そう思っている。

いろいろな思いがこもっている、その色。
それを、久しぶりに、見た。

カガリのボディーガードを勤めて、早2年。
世間は・・・再び、戦争の最中にある。
いや、休戦条約、それは未だに有効であるから、戦争というのは少し違うかもしれない。
そして、だからこそ前回よりも性質が悪い。

敵も、味方もごちゃ混ぜになって、憎しみと憎しみから、憎しみを生んでいる。
そんななか、改善策を見出そうと、中立国であるオーブが話し合いの場に選ばれたのだ。

そんなことはよくある話で、珍しいことでもない。
そして、大体においてここへくるのは、先の戦争において顔見知りになった人物が多かった。
なるべく多くの話し合いを、というのはオーブ代表であるカガリが強く主張していることでもあるので特に異論もない。
危機管理その他において、もちろん不安に思う声も上がっているのは確かだが。
とにかく、そんな感じで、今回も議会が開かれたのだった。

「やっぱり、話し合いというものは、代表者同士が話し合うものだろう。」
「しかし、姫様。」
「お父様もそうおっしゃるはずだ。」
「危険すぎます!代わりのものでもよいではありませんか。」
「どうしてもそれでは主観が入ってしまうだろう。それではいけない。私は自分の言葉で会話がしたい。」
「姫様・・・」
「心配するな。大丈夫、ボディーガードは連れて行くし、それに・・・私がいなくなっても、オーブはオーブでいられるだろう?」

毎回のように繰り返される言葉の応酬。
どうせ、彼女は言い出したら聞かないのだ。
部下の反対も聞かず、俺に向かって「今回もよろしく」、そう言って廊下に飛び出してしまう。

会議室の廊下、そこには各国のガードたちでいっぱいだった。
会議室は基本的に銃火器・刃物その他の持ち込みならびにガードの一切の入室が禁じられている。
そのせいで廊下や、会議室のホールに自然とこういった職のものが集まるのである。
抗争などが起こると、それは各国の面子にかかわるので、皆、きちんと統制された者たちばかりだ。

「じゃあ、いってくるから。」
「ああ・・・頑張って。」

白い、衣装を身にまとって、彼女は会議室の中に入っていった。
さて、これからどうしたものか。
当然、ここで待機である。
なのだが、ここにはプラントの人間もいる。
そうなると・・・自分の顔を知っている人間もちらほらといるわけで。
偽名を使い、サングラスで顔を隠しているとはいえ、どうしても心許ない。
なるべく目立たないよう、廊下の隅の壁にもたれかかってじっと時が過ぎるのを待った。

そして、周りを見渡したところで、赤い軍服を見たのだった。
まだ、年若い少年。
過去の自分を、否が応でも髣髴とさせる。
なんとなく目が離せなくなって、じっと見ていた。

目が、合った。

「え・・・」

こちらはサングラス越しだ、目が合うなんてことはないはず。
それなのに・・・間違いなく目があったと思った。
赤い、瞳に射抜かれた。
彼は、そのままゆっくりとこちらに向かって歩いてきた。
彼が、こちらに目をつけたのはもう否定のしようがない。

つ、と俺の目の前に立つ。
サングラス越しに、じっと見つめられる。
その後、

「はじめまして。」

普通に挨拶された。

「あ、ああ・・・はじめまして。」

ちょっと飲まれそうになりながら、何とか挨拶を返した。
間近で見ると、本当に幼い少年であることがわかる。
こんな年で、人を殺すのか・・・。
赤。
それは、人殺しのトップの証。

「あなたに、ずっと会いたかったんです。やっとお会いすることが出来ましたね。」
「え・・・?」
「僕は、シン・アスカといいます。アスラン・ザラさんですね?」

息が、詰まった。
否定しなくては、と頭では考えるのに、体が付いていかない。

「いや・・・俺は・・・」
「人違いでしたか?とても美しい青い髪と・・・」

サングラスを外された。

「緑の瞳をしていると聞いたのですが。」
「・・・」
「ああ、やっぱりザラさんだ。そうですよね?」

もう、否定しても意味がないだろう。

「・・・そうだ。」
「少し、お話しても?」
「わかった。でも、ここはあまり・・・好ましくない。場所を移そう。」

嫌がるかとも思ったが、すんなりと彼は受け入れて、俺の後をついてきた。
使われていない小さな談話室に彼を案内する。

「その、椅子に座って。」
「ありがとうございます。」

少しも物怖じすることない、応対。
どっちが年上なのか、わからなくなる。

「さて・・・話したいこととは?」
「特に、そんな対した話じゃないです。先の戦いで・・・貴方はこの服を着ていたにもかかわらず、ザフトを離反した。その理由を聞こうと思って。」
「それは・・・」
「貴方は血のバレンタインでお母様を亡くしている。そのせいでザフトに入ったそうですね。」
「そうだ。」
「復讐・・・」
「まったくその通りだ。」
「では・・・何故・・・?」

何故か。
そんなこと・・・。

「父のことが、プラントが目指していることが、わからなくなった。ナチュラルをすべて滅ぼすことが、目的であっていいはずがないと。」
「本当に・・・?だって・・・」

復讐ならば、皆殺しにしたいと思わないのか?

「ああ・・・。人を憎んでも、どうしようもない。俺が、復讐をすれば、またどこかで同じように苦しむ人が出るんだ。もう、そんなのは嫌だった。」
「僕は、違います。」
「・・・」
「僕に苦しみを与えた人に、僕と同じ苦しみを与えなければ・・・」
「それで、気が済むのか?」
「ええ。ですから、力が必要なんです。」
「それが、ザフトに入った理由か・・・」
「そうです。」

彼は、昔の自分だ。
まるで、鏡に映っているかのよう。

「そんなことしても、空しいだけだぞ。」
「いいんです、それでも。」
「・・・それよりも大切なことがあるんじゃないのか?」

もっと、大切なこと。
戦うよりも、何よりも。

「もう、全部なくなりましたよ。」
「だったら、探せばいい。」
「じゃあ、貴方は見つけたんですか?」
「ああ。」
「それは・・・あの、オーブの代表の・・・」
「そう思ってくれてかまわない。」
「そうですか・・・。」

彼も、見つけるといい。
復讐よりも、大事なものを。

「でも、やっぱり僕には復讐しかないようです。」

「そんなにあっさりと決めるもんじゃない。ゆっくりでいいんだ。」

「そうですね・・・そのうち。」

でも・・・と彼は続ける。

「キラ・ヤマトだけは、彼だけは許さない。」

「!!」

思わず立ち上がる。

「キラ、キラをっ、殺すというのかっ!」

胸倉をつかんで、激しく揺する。
しかし、彼の目は冷えたまま。

「どうして・・・ああ・・・貴方が本当に大切なのは・・・」
「・・・っ」
「そうですか・・・」

彼はおかしそうにふっと笑うと、

「ん・・・っ、んん・・・」

口付けをしてきた。
思う存分口腔を犯してから、口を離す。
力が抜けて、その場にへたり込んだ。

「僕がキラ・ヤマトを殺しても、貴方は復讐をやめろなんて言えるんですかね。それとも、その前に僕を殺しますか?」
「・・・」
「どちらにせよ、楽しみにしていますよ。」

それではまた、と言って、彼は部屋から出て行った。
そこに、一人取り残されて、俺は。
ただ、何も言えずに、座り込んでいるのだった。



2004.08.07

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