No Title...

君が生まれてきた、大切な日だから。

はぁ・・・っ、と息を吐く。
すると、水分が公園の明かりに反射してキラキラ光る。

もう年の瀬。
いつの間にか気温がぐんぐんと下がり、気がつけば、手袋やマフラーなしでは外に出られなくなるほど寒い。
そんな真冬の夜に、一騎は一人、ブランコに乗っていた。

キィ・・・と小さな悲鳴を上げながら、小さくブランコが揺れる。
空を見上げれば、澄んだ空気の中に星がいくつも輝いて見えた。
その吸い込まれそうな空を見上げて、今度は感嘆の溜息。

この冬空が小さいときから好きだった。
外は寒くて、暖かいところにいれば出たいとは思わないのに、それなのに、一旦外に出ると今度は家に入れなくなる。

その美しい夜空に魅せられて。

早く帰らなければ・・・そう思っても、つい見惚れてしまう。
それほどに、真冬の空は美しい。

キィ・・・
またブランコがきしむ。
手袋をしていてさえ悴んでくる指先に息を吹きかける。
一瞬温まってはすぐに冷える指先をこすり、また空を見上げたところで、その音を聞いた。

ぱっと振り向くと、驚いたように亜麻色の髪が広がる。
それが明かりに反射して、空の星のように輝いた。

「総士」
「一騎・・・か」

一言声をかければ安心したような声色とともに笑顔が返る。
その笑顔に引き寄せられるようにブランコから降りて駆け寄れば、信じられないくらいに薄着の格好に驚いた。

「総士・・・お前何か着ろよ。」
「え、ああ・・・」
「え、じゃない、風邪をひくだろ。寒くないのか?」
「え、ああ・・・ちょっと寒いかな。」

でも平気だ、と返す彼の手を握って、一騎は怒ったように声をあげる。

「どこがちょっとなんだ!」

信じられないくらいに、冷たい指先。
手袋越しにでもわかるほどの。
慌てて手袋を取って、その両手をじかに握りこむ。
氷のような指先に体温が吸い取られていった。

「一騎の手、暖かいな。」
「俺の手が暖かいんじゃない、お前の手が冷たいんだ。」

全く・・・といいながら必死になって指先を温めようとする一騎に、総士は苦笑する。
その声にむっとしながら一騎は総士を睨んだ。

「こんなに薄着だったら外になんかいられないだろ、しょうがない、今日は帰ろう。」
「・・・別に大丈夫だ。」
「大丈夫じゃない!」

もう、帰るぞ、と総士の手を引いて公園を出る。
こんな薄着で外に出られたらたまったものではない。

「一騎。」
「何だ?」

不機嫌そのままの声で返せば、総士は苦笑し、けれど質問を続けてくる。

「なんでこんな夜に僕を呼んだんだ?」
「・・・空、見てみろよ。」
「・・・っ」

総士の脚の動きが止まる。
それとともに息を呑む気配。
空に釘付けになっている姿をみて、一騎は盛大に白い息を吐くと、一緒に空を見上げた。

「・・・凄い・・・」
「これを見せたかったんだ。」
「・・・ああ」
「特に、今日は。」
「・・・ぇ」

空から視線を外し、きょとんとした瞳を総士は一騎の方へよこす。

「今日は総士の誕生日だろ。・・・何プレゼントすればいいかわからなかったから。」
「・・・っ」

ぎゅっとつないだ方の手が握りしめられた。
その手は総士の胸元まで引き上げられ、総士のもう片方の手がそれをさらに包み込む。

冷たい。

その氷のような冷たい手を温めたくて、もう片方の手で包み込めば、小さな言葉が降ってきた。

「・・・ありがとう」

君が生まれてきた、大切な日だから。
この日の中で一番美しいものを、君に。



2004.12.27.
2008.06.01.



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